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京都大学臨界集合体実験装置 Kyoto University Critical Assembly : KUCA

臨界実験装置とKUCAの特徴report

   

KUCA特徴

1.臨界実験装置の定義  
 原子炉等規制法施行令によると、臨界実験装置は次のように定義されている。すなわち「炉心構造を容易に変更することができる原子炉であって、核燃料物質の臨界量等当該原子炉の核特性を測定する用にもっぱら供するもの」となっている。英語では、Critical Assembly (臨界集合体)、Critical Facility (臨界装置)、Zero Power Reactor (零出力炉)などといわれているが、ほぼ同義語である。例をあげると、TCA (Tank-type Critical Assembly, 原研)、OCF (Ozenji Critical Facility, 日立)、ZPPR (Zero Power Physics Reactor, ANL アイダホ)などである。  

2.臨界実験装置の特徴  
 原子炉を動力炉と研究炉に大別すると、臨界実験装置は後者に属するが、京都大学研究用原子炉(KUR、Kyoto   University Research Reactor, 5MW) などと比較して、次のような特徴がある。
  (1)出力が低い。   − 研究炉は通常 100KW〜30MW 程度だが、
   臨界実験装置の最大出力は 10W〜1KW、通常 1W 以下で運転する。KUCAでは 0.01W 程度の運転が多い。  
  (2)核分裂生成物(F.P.、Fission Product)の蓄積が少ない。 − F.P.は出力にほぼ比例するので当然のことである   (3)生体遮蔽がない。 − 炉心はむき出しで、一般の原子炉に見られるコンクリートの生体遮蔽はない。
   炉心からの漏洩放射線は、それ程強くないので、主に建屋の壁で遮蔽される。
  (4)炉心の組替えが容易である。 − (2)、(3)の理由による。燃料操作は一般に遠隔操作をしない。
  (5)スクラムが容易にできる。 − 出力が低いため Xeの蓄積の問題がなく、いつでも再起動できる。したがって、   何かあれば、まずスクラムするという考えが強い。  

3.臨界実験装置を使う目的
 通常新しい型の原子炉を設計する場合は、各種の計算コード(計算のモデル、核データ、核データの組定数化を含む。)によって炉心設計をするが、最終的には臨界実験装置によってその妥当性を検討する。炉心を改造する場合も同様な手順がとられる。この種の実験は、モックアップ (mock up) 実験といわれる。さて、コンピュータによる計算は、その体系の積分量を必ずしも正確に求めることができるとは限らないし、ミステークなどが含まれることもある。したがって、最終的に評価するには臨界実験装置に依るのが、最も直接的であり、かつ信頼できる。計算費用も決して小さい額ではないこともあって、炉心の体系が複雑化するほど、実験の効用は大きいといえる。 臨界実験装置に求められる物理量は、本実験でもわかるように、すべて積分量である。臨界量、制御棒価値、中性子束分布、温度係数など、計算で求める場合は微分量な物量量(例えば中性子断面積)から種々の過程をへて積分量にたどり着く。そこで、積分量の計算と実験を比較することによって、計算に用いたデータ、計算のプロセスなどの妥当性を検討することができる。 一方、新しい原子炉の開発のためというよりも、むしろ、計算方法そのものの検討を主目的にした実験として臨界実験装置が使われることがある。この種の実験はよくベンチマーク(benchmark:水準点)実験といわれ、比較的簡単な形状及び組成で行われる。cold and clean(cold:燃料が燃焼していない、clean:炉心に余計な中性子吸収物質が入っていない)実験ができる臨界実験装置にふさわしい使われ方である。しかし、臨界実験装置の目的としては、特定の新しい原子炉の開発のためが第一で、ベンチマーク実験は第二と見られている。  

4.KUCAの特徴 本実験に用いる装置の正式名称は「京都大学臨界集合体実験装置」で、英語ではKUCA(Kyoto University Critical Assembly)と言う。
 KUCAは世界でも類を見ない複数炉心型であり、一式の制御棒駆動機構で、3つの炉心を運転することができる このことによって、変化に富んだ研究テーマをこなすことができるようになり、共同利用研究所にふさわしい装置 となった。KUCAについてもう一つ珍しいことは、大学が保有している世界でも数少ない臨界実験装置であることだ ろう。  

5.KUCAで行われた研究テーマ  
1974年8月6日に初臨界になって以来、次のような研究テーマの研究が行われてきている。  
 (1) トリウムサイクル  
 (2) 臨界安全  
 (3) 稠密格子炉心  
 (4) 中性子スペクトル測定  
 (5) 高中性子束研究炉  
 (6) ウラン燃料の濃縮度低減化  
 (7) 動特性パラメータ測定  
 (8) トリウム・ハイブリッド炉  
 (9) 加速器駆動未臨界炉
 (10) 原子炉物理に関する基礎研究

固体減速架台 A架台 ・ B架台

 A, B架台は、共にポリエチレンや黒鉛を減速材として使用しているので、固体減速架台と呼ばれ、ほぼ同一の構造を持っています。

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軽水減速架台 C架台

 C架台は、軽水を減速材として使用しているので、軽水減速架台と呼ばれ、直径、深さともに約2mのアルミ製タンクの中に臨界集合体が構成されています。

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KUCA付設加速器

 KUCA付設加速器は、パルス中性子を発生させ、臨界集合体を組み合わせて、
 (1) 反応度測定
 (2) 動特性パラメータの測定
 (3) 飛行時間法による中性子スペクトルの測定
等に用いる目的で設置されました。

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KUCA制御室