チェルノブイリ新聞切り抜き帖(1992年)


 

1992/1/3 朝日:ローマ:都丸記者
イタリア司法当局が、旧ソ連製核物質を密輸するグループが存在すると発表。北部国境近くで4グラムのプルトニウムを押収。また、スイス警察は30キロのウランを押収している。一部はロシア・イルクーツクのソ連軍から運び出されたもので、KGBのスタッフも絡んでいた。

1992/1/4 毎日:石郷岡記者
アルメニアのチフタラリャン国務相は31日、現在閉鎖中のアルメニア原発は新年度から再開される、と語った。

1992/1/14 日経:ロンドン=時事
リビアなどが旧ソ連の核開発科学者に手を伸ばしている。旧ソ連では、プルトニウム・濃縮ウランの製造に3〜5千人、核兵器設計に2千人など数万人の科学者が核開発に従事していた。

1992/1/16 毎日:時事
14日発売の「論拠と事実」によると、ウクライナ共和国最高会議チェルノブイリ事故調査グループは、ロシア、ウクライナ検察に対し、旧ソ連指導者の罪を調査するよう告発。告発されたのは、ゴルバチョフ、リガチョフ、シェフチェンコ元ウクライナ最高会議議長ら。

1992/1/18 読売:モスクワ=古本記者
特別記事。旧ソ連には核開発の「特別閉鎖都市」が87ヶ所、うち10ヶ所は「最重要国防拠点」。その一つ「アルザマス16」は人口8万人。

1992/1/19 日経:モスクワ=道善記者
モスクワラジオがロシアのウラン輸出を増やすと報じた。カザフも計画。

1992/1/20 毎日:ロンドン=共同
サンデー・エクスプレスは19日、リビアが高給で旧ソ連原子力専門家を引き抜いていると報じた。昨年9月からリビアの砂漠地帯にある原子力研究所で働いているチェルニコフ氏が語ったところでは、給料年6万ポンドで、他にも3人。

1992/1/22 朝日:モスクワ=大野記者
エリツィン大統領は21日、原子力産業の幹部、学者らと会見、核兵器、原発問題、科学者の労働条件と社会的保護について協議した。

1992/1/22 毎日:RP
ボルコノフ・ロシア大統領軍事顧問によると、CISから他国への核技術漏洩は有り得ると述べ、核専門家の国外流出を禁止する法律を採択すべきとの主張があると紹介。

1992/1/23 日経
来日中のコズィン旧ソ連原子力発電産業省経済局長によると、同省は1、2ヶ月以内に解体。安全管理、開発は新設の原子力安全委員会が引き継ぎ、発電は企業合同体が受け持つ。

1992/1/25 毎日:時事
パリで発行されているアラビア語週刊誌によると、旧ソ連の1共和国が核兵器をイランに売却。3発で1億ポンド。売却したのはカザフスタンと見られる。

1992/1/25 日経:ロサンゼルス支局
米政府は旧ソ連の核開発にあたっていた科学者約2000人について雇用機会を提供することの検討を始めた。旧ソ連の核兵器処理のため米議会はすでに4億ドルを承認しているが、その一部をあてるもよう。

1992/1/27 毎日:RP
リトアニア共和国の環境保護相はこのほど、イグナリナ原発の運転続行を決定したと述べ、「イグナリナはチェルノブイリと同じタイプで、危険かつ質が非常に悪い」と付け加えた。

1992/1/28 毎日:ボン=共同
ウクライナの物理学者チェルノセンコは、チェルノブイリ事故処理に従事した百万人が生命の危険にさらされている、と語った。

1992/1/31 サンケイ:モスクワ=共同
リトアニアのイグナリナ原発職員が、コンピューター・ウィルスを原発システムに侵入させ、原子炉を損傷させようとしたとして逮捕された。ウィルスが侵入したのは、原子炉制御システムではなく補助システムだった。

1992/2/1 毎日:モスクワ=石郷岡記者
核兵器開発の責任者ミハイロフ教授によると、核兵器の秘密情報をしっているのは1万から1万5千人、うち2、3千人が最重要情報を持っている。国外流出の可能性は全くないと説明。

1992/2/3 毎日:RP
ロシア政府は、ノボボロネジ第2原発を建設する決定を採択した。

1992/2/3
朝日:ワシントン=吉田記者
エリツィン大統領同行筋は、核兵器解体後のプルトニウム売却を検討していることを明らかにした。

1992/2/5 朝日:モスクワ=青木記者
25年以上にわたって旧ソ連軍核弾頭の生産にあたってきたゴルバチョフが、「我々の核管理は破滅的状況にあり、チェルノブイリのような事故が大なり小なり数百も起きることになる」と語った。

1992/2/7 日経:モスクワ=横田記者
旧ソ連の核兵器製造技術者のミナエフ氏によると、製造技術は1940年代以降ほとんど変わっておらず、手作業を中心に組み立てられていた。1ヶ月に役30弾頭生産していたという。

1992/2/7 日経:ワシントン=時事
ベーカー国務長官は下院公聴会で、ロシア側から原子炉燃料のウランを米国に売却したいとの打診があったことを明らかにした。

1992/2/8 朝日:ウィーン=萩谷記者
IAEAは、旧ソ連型原子炉10基の安全水準が危険なレベルにあると認定。ブルガリア・コズロドイ4基、チェコ・ボフニチェ2基、旧ソ連のコラ2基、ノボボロネジ2基。

1992/2/8 北海道:モスクワ=時事
コラ半島ムルマンスクに近いポリャルネイなどで、原潜解体作業により放射能が流出、許容量の60倍を越えている、と旧ソ連北方艦隊指令部が明らかにした。

1992/2/10 北海道:ハンブルグ=時事
旧ソ連・東欧の核燃料がやみ市場で取引されている。ルーマニアとブルガリアの原子力施設から天然ウランと一部濃縮ウランが紛失したことをIAEAも確認。

1992/2/13 日経:モスクワ=横田記者
ウクライナは、ニコラエフで建造中の原子力空母「ウリャノフスク」の廃棄を決定。今後ロシアが反発する可能性。

1992/2/18 毎日:モスクワ=飯島記者
エリツィン大統領とベーカー国務長官はクレムリンで会談後、米ロ独で核技術者漏出防止のための「国際科学技術センター」を設立すると発表。米国は2500万ドルを拠出。

1992/2/18 朝日
科技庁は18日、核解体で出てくるプルトニウムを発電で活用するための専用炉の設計に入ったことを明らかにした。核軍縮案が実施されると、1万5千個の弾頭が解体され、プルトニウム70〜80トン、ウラン220〜240トンが出てくる。電気出力80万kWの炉で、年間2トンのプルトニウムを燃やす。

1992/2/29 朝日:ワシントン=吉田記者
ワシントンで開かれた米とCISの非公式会議でプルトニウム処分法を協議。原発で燃やす案と、地下で爆発させる案を討議。

1992/3/5 北海道:モスクワ=共同
モスクワ南東800kmのバラコフ原発で4日午前1時、発電機がショートして出火、40分後に消し止められ、負傷者はなかった。

1992/3/7 朝日:ニューヨークタイムズ
米政府は、核融合研究推進のためロシアで百人以上の科学者を雇用する計画を進めている。116人について年間9万ドルで契約、月給65ドルで格安。

1992/3/7 サンケイ:ロンドン=時事
ザ・タイムスは6日、カザフスタンにある旧ソ連の核兵器解体施設近くの集団農場で、労働者やその家族十数人が変死していると報じた。アルマータ北100kmのサリオゼク周辺で、さらに北100kmのタルディクルガンに廃棄施設。農場で15人死亡したほか、羊や牛が次々と死んでいる。

1992/3/9 毎日:モスクワ=時事
イズベスチヤによると、旧ソ連15ヶ所の原発で昨年1年に3回の放射能漏れ事故と270回の運転停止があった。放射能もれは、イグナリナ(5月)、ロシア・ビリビンスク(7月)、チェルノブイリ(8月)。

1992/3/10 朝日:ベルリン=亘理記者
バイエルン州警察は9日、濃縮ウラン1.2キロを190万マルクで売ろうとした、ドイツ系ロシア人二人を逮捕した。

1992/3/10 毎日:モスクワ=共同
ベラルーシのカザコフ保健相は、ゴメリで開かれた科学者会議で、チェルノブイリ事故発生以来ベラルーシで子供の甲状腺ガンが45件確認され、発生率は事故以前に比べ17倍になったと述べた。その他、肺、胃、血液の疾患や妊娠異常も増えていると指摘。

1992/3/11 毎日:モスクワ=時事
ロシア・クルスク州クルチャトフ原発で9日、タービン発電機冷却システムの圧力低下で火災が発生した。原子炉は緊急停止、まもなく鎮火、放射能漏れなし。

1992/3/13 福島民友:ロンドン=共同
ウクライナ環境保護省顧問のチヒー博士は11日、ブリストルの会議で、チェルノブイリ事故によるキエフ州の汚染地帯で、動物の奇形出産が増えていると指摘した。事故以前は極めて少なく、明らかに汚染が原因と述べた。

1992/3/12 北海道:モスクワ=共同
エリツィン大統領は、ノバゼムリャ島での核実験再開の準備をする大統領令を出した。昨年10月、ロシアでの核実験を1年間停止する決定を出していたが、軍の圧力などを背景に実験再開の方針を固めたとみられる。

1992/3/13 北海道:モスクワ=共同
イズベスチヤは12日、CIS海軍の戦略原潜は62隻で、このうち24隻が太平洋艦隊に配属されているとのデータを掲載した。SLBMは940基で、弾頭数2800発。太平洋艦隊には348基。

1992/3/18 毎日:時事
ロシア原子力エネルギー省のボグダン補佐官は、クラフチュク・ウクライナ大統領が提案した戦術核廃棄の共同管理構想について、「核兵器解体の機能、装置は国家機密に属する」と拒否。

1992/3/25 毎日:モスクワ=飯島記者
24日午前2時半ごろレニングラード原発3号炉で放射能漏れ事故。ECCSが作動。ロシア原子力エネルギー省はレベル3と発表。

1992/3/30 毎日:共同
USニュース&ワールドレポートによると、最近ウクライナで戦略ミサイルの弾頭3個が紛失。2月にはカザフスタンで3個の戦術核弾頭がなくなった。

1992/4/9 毎日:モスクワ・共同
タス通信は7日、ナホトカの環境団体の話として、ナホトカ港近くの海底で通常の20倍の放射線を出す物質がみつかった、と伝えた。

1992/4/12 毎日
通産省筋は11日、CISの原子力発電所の安全性向上に協力するため、日本が出資してロシアに原発技術者の研修所を設置する構想を明らかにした。同省は92年度から10カ年計画でCIS、東欧の原発技術者1000人を日本に招き、事故対策や安全運転についての研修を行う構想を進めていた。しかし、レニングラード原発事故をうけて同計画の見直しを進めていたもの。

1992/4/19 毎日
3月に発生したロシア・レニングラード原発3号機の事故について。ロシア原子力省などの調査では、圧力管に入る冷却水量を調整する弁の故障で水量が1時間当り20立方mから3立方m以下に減り、温度が通常の300度から800度に上昇。原子炉は自動停止したが圧力管が損傷し、放射性希ガスやヨウ素が外部に放出された。

1992/4/22 毎日:モスクワ・石郷岡記者
ロシア政府はクラスノヤルスクの核兵器用プルトニウム生産炉2基の閉鎖を決定。1号機は今年7月1日、2号機は9月1日以前に閉鎖の計画。

1992/4/25 毎日:モスクワ・石郷岡記者
イズベスチヤ紙は24日、6年前のチェルノブイリ原発事故に関するソ連共産党政治局の秘密書類をもとに、「政治局の事故対策グループは、事故の内容を隠蔽し、ウソでかためた情報を流し続けた」と厳しく告発する記事を掲載した。記事は、元ソ連人民代議員でジャーナリストでもあるヤロシンスカヤによるもので、秘密書類の入手は困難を極め昨年夏のクーデター以後やっと手に入れることができたという。その資料によると、被災地の放射能汚染治療療患数は1万人にも及んでいたが、記者会見用の文書では「住民には治療を要する被害はなかった」と説明することが求められていた。

1992/5/2 毎日:モスクワ・共同
ロシア・サラトフ州のバラコボ原発1号機で2日朝、油圧式開閉器が破裂。原子炉は停止しなかったが同機の発電機が止まった。火災や放射能漏れはなかった。

1992/5/16 毎日
来日中の欧州復興開発銀行(EBRD)のアタリ総裁は15日、旧ソ連諸国内にある原発の安全性確保のために緊急に20億ドルの無償資金援助が必要との見解を示した。

1992/5/25 毎日:リスボン・伊藤記者
リスボンで開かれているCIS支援調整国際会議は、「支援調整グループ」設立を提案、原発の安全確保などを柱に技術支援を行うことを確認。1月のワシントン会議で食料援助など短期的援助が焦点となったのに比べ、今回は中長期的支援態勢が中心。また、日本、米国、EC、ロシアは、旧ソ連からの頭脳流出を防ぐためモスクワに「国際科学技術センター」を設置することで合意、仮調印を行った。

1992/6/7 毎日:ワシントン共同
アンドロポフ元ソ連共産党書記長が、KGB議長時代の1979年2月に、チェルノブイリ原発の欠陥を指摘、事故の可能性を警告していたことが明らかになった。

1992/6/10 毎日:モスクワ支局
イズベスチヤ紙は9日、ロシア科学アカデミーが現在ロシア領内で稼働する原発9カ所のうち7カ所の閉鎖を勧告したと報じた。

1992/6/10 毎日:時事
インタファクス通信によると、チェルノブイリ原発4号炉を覆うコンクリート防護壁の一部が崩壊、内部の放射性物質が流出している可能性の強いことが9日明らかになった。

1992/6/10 毎日:モスクワ支局
ベラルーシ最高裁判所は9日、ベラルーシ共産党の政党登録を拒否した司法省の決定を「法律違反」とし、共産党活動合法化の判断を示した。

1992/6/27 毎日
通産省首脳は26日、ミュンヘンサミットでの焦点となっている旧ソ連・東欧の原発安全対策費用について、日本、米国は2国間方式で拠出することを明らかにした。ECは、欧州復興開発銀行を窓口にすべきと主張してきた。安全対策費用は総額7億ドルとされている。設備改善費用3億2千万ドル、訓練センター設置などで3億3千万〜3億6千万ドル。

1992/7/1 毎日
閉鎖が問題となっている、旧ソ連・東欧の原発は、チェルノブイリ型15基、第1世代旧ソ連加圧水型10基の合計25基。

1992/7/3 毎日
政府は2日、旧ソ連・東欧の原発の安全対策費として、日本は米国並みに当面2千万〜2千500万ドルの支援を行う方針を決めた。6日から開かれるミュンヘンサミットで宮沢首相が表明する。

1992/7/18 毎日:ブリュッセル・谷口記者
ブリュッセルで15、16日に開かれた東欧支援会議(G24)は、旧ソ連・東欧原発安全化に関する運営委員会設置を決定。安全管理上問題があり「危ない」とされる原発は約25基。G24ではこれらを5年以内に段階的に閉鎖したいとしている。

1992/7/19 毎日:モスクワ・飯島特派員
ロシア政府機関紙・ラシスカヤベスチは18日、チェルノブイリ原発事故に関する旧共産党政治局の秘密文書を掲載。政治局が被害の甚大さを示す報告書を無視してウソを発表していたと告発した。

1992/7/16 毎日:RP東京
ロシア最高会議は14日、これまで市販の地図には載っていなかった秘密都市、「閉鎖行政地域」の廃止に関する法律を採択した。

1992/7/24 毎日:モスクワ時事
ビリニュスからの22日夜の報道によると、リトアニアのイグナリナ原発で事故。

1992/8/3 毎日:モスクワ共同
1日付けのロシアのネザビシマヤ紙によると、西側から閉鎖要求が強まっているチェルノブイリ型原発の安全性に対するロシア原子力専門家の自己評価は、5点満点で2という低いものであることが明らかになった。

1992/10/2 毎日:ロンドン・菊池記者
欧州復興開発銀行の発表によると、ブルガリアのコズロドゥイ原発6号炉でかなり大きな火災事故が発生し、運転停止した。

1992/10/10 毎日
チェルノブイリ原発事故による住民の健康被害を調査する政府派遣の専門家8人が11日から21日までロシア、ベラルーシ、ウクライナを訪問する。団長は秋葉放影研疫学部長。

1992/10/21 毎日:ウィーン・高畑記者
ポーランド国営通信によると、同国西部国境の町テレスポルで20日、自宅の風呂場にウラン1.5kgを隠していた男が、密輸と危険物隠匿の疑いで逮捕された。

1992/10/22 毎日:ウィーン・高畑記者
IAEAは21日、旧ソ連からの放射性物質密輸事件にからんで密売人が放射線障害で発病した事例を公表。スイスのチューリヒで放射性セシウム2グラムを所持していたポーランド移民1人が摘発されたが、胸ポケットに入れて所持していたため重体とのこと。

1992/11/1 毎日
ベラルーシの汚染地では4割の子どもに甲状腺肥大などの影響。同国の小児科医らが31日大阪市内で開かれた市民団体との交流会で報告したもの。

1992/11/2 毎日:キエフPAP共同
ベラルーシの検事総長代行は10日、ウラン2.5kgを密輸出しようとしたロシア人を逮捕したことを明らかにした。

1992/11/2 毎日
10月下旬、チェルノブイリ救援活動をしている市民団体など約60人が東京に集まり「第2回チェルノブイリ救援グループ全国会議」を開催した。会議を呼びかけたのは通信販売会社「カタログハウス」。

1992/11/5 毎日
チェルノブイリ事故の被曝者治療に取り組んでいる広島大学医学部の上田教授が4日、白血病を患っているキエフ市の友人の長女を広島で治療するため。「カーチャを救う会」を結成した。

1992/11/25 毎日
日本とロシアの原子力協議が24日から外務省で開かれ、ロシア側は、核兵器の解体によって生じる高濃縮ウランを日本の原発燃料として転用する構想を打診。

1992/12/24 毎日:モスクワ・共同
共同通信が入手したロシアの政府計画案によると、これまで原発のなかった沿海州やハバロフスクなど、極東地域を含め5カ所に原発を建設する計画。