貧弱なウラン資源

   石油をはじめとする化石燃料は地下に眠る資源であり、使えばいずれなくなってしまいます(そうした資源を「再生不能資源」と呼びます)。しかし、だからと言って「化石燃料がなくなるから原子力」ということにはなりません。なぜなら、原子力の燃料であるウランもまた「再生不能資源」だからです。そうであれば、次に考えるべきことは、化石燃料の資源量と原子力の燃料であるウランの資源量との比較です。その点を下の図に示します。
「再生不能資源」のうちもっとも資源が多いのは「高品位炭」、つまり石炭です。次に多い資源もまた「低品位炭」、石炭です。かりに究極埋蔵量の全てを利用できるとすれば、石炭だけで現在の人類の使用量の1000年分あります。次に多い資源に「オイルシェール」や「タールサンド」という、現在では使いにくいため利用されていない資源があります。さらに現在の私達の文明がどっぷりと依存している「石油」、使いやすいために最近急激に使用量が増加してきた「天然ガス」もあります。この天然ガスは最近になって相次いで有望な資源が発見され、天然ガスだけでもおそらく人類の1000年分の消費量をまかなえるという推定もあるほどです。
 これらがすべて「化石燃料」ですが、「化石燃料がなくなるから原子力」と言われた原子力の資源であるウランは、一番右にある小さな四角しか資源がありません。原子力を推進する人たちの宣伝とは裏腹に、そして多くの人々が抱かせられた幻想とは違って、ウラン資源は石油に比べても数分の1、石炭に比べれば100分の1しかないという大変貧弱な資源なのでした。
 事実をありのままにみることができ、それをありのままに表現するのであれば、「ウランは化石燃料よりはるかに早く
枯渇する」ということになります。そんな原子力に人類の未来を託すことなどもともと馬鹿げたことでした。


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