高速増殖炉に託した夢


原子力の燃料として燃えるウラン(U-235)だけしか利用できないとすれば、エネルギー発生量に換算した資源量は石油に比べても数分の1、石炭に比べれば100分の1程度しかありません。これでは、未来のエネルギー源とは呼べません。一方、ウランのうち圧倒的部分(99.3%)を占める燃えないウラン(U-238)は原子炉の中でプルトニウムに姿を変え、そのプルトニウムがまた原子炉の燃料として使えます。もし、この変換を理想通りに実現できるとすると原子力の燃料は約60倍に増加すると、原子力を推進する人たちは言っています。それでも、原子力の資源はようやく石炭に匹敵する程度にしかなりませんから、やはり、原子力を化石燃料が枯渇した後の未来のエネルギー源と呼ぶことはできません。「核分裂エネルギーは核融合が実現できるまでのつなぎのエネルギー源」といわれるのはそのためです。
また、原爆を作るためなら数kgから十数kgのプルトニウムを作れば済みますが、原子炉で燃やそうとすれば1基の発電所で100トン、エネルギー源として意味のある量を作ろうとすれば、最終的には百万トンの桁でプルトニウムを生み出さねばなりません。今日ようやくにして利用されている原子力発電所の原子炉では、燃えないウランがプルトニウムに変換される効率が低く、そのような目的には到底役に立ちません。そのため、原子力(核分裂エネルギー)をエネルギー資源として意味のあるものにするためには、高速増殖炉と呼ばれる原子炉を実用化しなければならないことが、原子力開発の当初から分かっていました。ところが、この高速増殖炉と呼ばれる原子炉は乗り越えなければならない技術的な課題がとてつもなく多くあり、原子力(=核開発)に関わったほとんどの国が一度は高速増殖炉開発に取り組んだものの、そのすべてが失敗してしまいました。
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