原子力発電所で事故が起きたらどうなるか

 事故の影響を知ることは容易である。なぜなら1986年に旧ソ連チェルノブイリ原子力発電所で恐れられていた事故が事実として起こったからである。そのため原子力発電所の事故が如何に悲惨な被害を生むかを知るためには、ただ事実を視るだけでよい。

 また、被害を知るためのもう一つの方法は科学の力を総動員して予測する方法である。原子力を推進してきた人々も万一の事故をおそれ、度々そうした予測計算を実行してきた。そのうち1975年に米国原子力規制委員会が発表した「原子炉安全性研究」での評価結果を表に示す。

 こうした被害を「破局的」と呼ばずに何と呼べばいいのか私は知らない。それも、この評価は人口密度の低い米国での評価である。もし日本でこのような事故が起きた時にはどうなるのか? それに答えてくれたのが、かつて私の同僚であった瀬尾健さんだった。彼は1994年に亡くなってしまったが、死の直前まで執筆していた原稿が「原発事故、その時あなたは・・・!」風媒社)として出版されている。(この本は、1999年に風媒社ブックレット-3、「原発事故の恐怖」として一部が再版された。)

 興味のある方は、そちらを参照してください。

原子力発電所(100万kW)で大事故が起こった場合の被害予測

米国・原子力規制委員会の評価(原子炉安全性研究:1975年)

被害項目

被害の程度

急性死者

約  13,000 人

急性障害者

約 180,000 人

晩発性癌死者

約 140,000 人

遺伝的障害者

約 150,000 人

甲状腺瘤発生者

約 720,000 人

永久立ち退き面積

約   1,500 km2

(大阪府の面積は 1,868 km2

農業制限(除染)面積

約  17,000 km2

(紀伊半島三県の合計面積は

約14,000km2

財産損害

約   8 兆円

日本の国家予算(1975年)

21 兆円



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