末田一秀(自治労大阪府職)


チタン廃棄物は、原鉱石にウラン等の放射能が含まれているため放射性の廃棄物であるにもかかわらず、放射能に関する規制が一切行われないまま普通の産廃処分場で埋め立てされていた。

 1990年に問題が発覚した当時、大阪府下では、大阪市西淀川区に所在する古河機械金属株から排出された放射性のチタン廃棄物が、堺市内の(財)大阪産業廃棄物処理公社の堺第7─3区処分場に埋め立てされていた。

問題発覚後、一時搬入停止措置が取られたが、大阪府と堺市のあいだで覚書が結ばれ、1991年5月から再び受入れが行われるようになった。ところが、覚書では、処分ではなく保管であるとされ、しかも1995年3月31日までに撤去することとされていた。

結局、この保管の取り扱いは後に変更され、そのまま埋め立て処分に変更された。放射性廃棄物の今後の処分問題でも、保管として持ち込まれたものがそのままになるということが予想され、教訓的な出来事である。

 私の所属する組合(自治労府職総務支部)では、従事者の安全確保や放射能の監視強化などを求めて、交渉や現場確認を実施し、その結果、トラック1台ごとのガンマ線測定や年2回の核種分析が行われることになった。また、暫定保管後の恒久対策についても組合と協議することを約束させた。

 199210月にチタン廃棄物をフェニックス計画の泉大津沖処分場に埋め立てしたい旨、当局より新たな提案が行われた。提案によれば、堺第7─3区ではシートをかけたトラックで運んで指定した陸地化した場所に埋め立てしていたのに対し、フェニックスでは大阪基地で運搬船に積み替え海面に埋め立て処分する計画であった。

 組合で交渉を行った結果、当局は放射能の監視体制などの組合の主張を受け入れ、現在フェニックスでの処分が行われている。

泉大津処分場の監視体制については、次のとおり。

 ・揚陸施設周辺については、チタン廃棄物搬入時、粉塵の飛散状況を監視する。

 ・チタン廃棄物の埋め立て場所直近及び処分場内海水については、年2回核種分析を行う。

 ・処分場からの放流水については、年2回核種分析を行う。

 ・測定内容及び大阪湾臨海環境整備センタ−への指導内容について、年2回、組合に報告、説明する。

チタン廃棄物の放射能について、運動体が継続的に監視している例は全国的にも他にないのではないか。報告されているデータの一部をグラフにしてみた結果を示す。

埋め立て開始時よりも濃度が下がっており、原鉱石輸入時に不純物含有量の少ないものを選ぶことが徹底した結果かと考えてきた。しかし、埋め立て開始前の値よりも下がっており、埋め立ての進行により護岸内面にあった海水が排除され淡水に置き換わってきた結果と考えるほうが適当かもしれない。

いずれにしても、広大な処分場であることもあり影響は現れていない。

今春 (2000)和歌山と神戸の製鉄所で放射性同位元素のスクラップへの混入事件が発生し大きく報じられた。その後、岡山県倉敷市の川崎製鉄水島製鉄所でも同様にゲートモニターが放射線を検出する事件があり、原因調査の結果、チタン製造工程のスクラップであることが判明した。

この事件を受けて科学技術庁は「チタン加工工場からのスクラップについて」という文書を出して他にも検出例があると公表しているが、いずれも今年の出来事であり、和歌山や神戸の事件がなければ報告も公表もされなかったと思われる。

この例を見ても、日常生活上接する可能性のある放射能としてチタン廃棄物は「高レベル」であり、産業廃棄物として扱えという厚生省他の通達は問題が大きい。廃棄物の定義に「放射性物質及びこれにより汚染されたものを除く」と書かれている廃棄物処理法に違反した通達ではないか。