ナノの世界を見る光である量子ビームの代表格 X線と中性子を協奏的に使い、
これまで見えなかった溶液中のタンパク質の構造解明を目指しています!
KIDS projectでは、中性子散乱を用いた構造研究の活性化のために重水素化タンパク質の調製の支援をしております。また、特に溶液散乱(小角散乱)では重水素化試料の作成だけでなく、構造解析のための試料系の設定・測定法マシンタイム・解析法まで、溶液構造研究全般に対してもご相談に応じます。ご興味のある方は、以下の情報を添えて pslabrri.kyoto-u.ac.jp までご連絡ください。
氏名 所属 ご興味(重水素化・中性子散乱全般) 試料(差支えなければ)
X線の特長は高強度のビーム
- この特長を生かして少量・高速の測定が可能です。特にタンパク質の溶液散乱では全体像を測定するのが得意。
中性子の特長は磁気を感じる能力と同位体を見分ける能力
- 中性子の同位体の識別能は、特に水素に対して優れています。この識別能力は同位体間の散乱長(単位fm)と言う値の差で表されます。
- 軽水素の散乱長=-3.37 fm、重水素=6.67 fm、その差=10.04 fm (ちなみに炭素では 炭素12=6.65 fm、炭素13=6.19 fm, その差=0.46 fm)。
したがって軽水素を重水素に置き換えた分子は、中性子で観測すればその部分は全く色の異なる分子として見ることができます。(重水素置換中性子測定法) - 重水素置換中性子測定法は、合成高分子や生体高分子(タンパク質、核酸)などの水素を多く含む物質に対して非常に有効に利用できます。
例えば、図のように、C1ドメインとC2ドメインからできているタンパク質にタンパク質Bが結合するとき、BがC1側とC2側のどちらに結合するかを明らかにすることが機能解析上非常に重要だったとします。通常の測定ではタンパク質は全て同じ散乱能なので、どちらに結合しても全体像はほぼ変化せず、結合サイトは判明できません。ところが、ここで、C2だけを重水素化して中性子で測定すれば、結合サイドによって観測される像が異なるので、結合サイドを解明することができるようになります。
まとめると・・・
X線散乱→全体像 中性子散乱→内部構造
問題点
- 重水素化タンパク質の調製は費用・時間がかかる。そこで・・・
KumatorI Deuteration Station (KIDS) projectを開始!
詳細はこちらをご覧下さい
計画の4つの柱
- 重要なタンパク質構造研究に重水素化タンパク質を供給
- 高効率・安価な作成法の開発
- 重水素化を用いた新たな中性子散乱測定法・構造解析法の開発
- 研究室所有のX線分析装置によるSAXS測定環境の提供(詳細はこちら)
重水素化協力実績
- 京都大学大学院 農学研究科 裏出研究室
- 東京農工大学大学院 工学府 生命工学専攻 養王田研究室
- 日本原子力研究開発機構 中川グループ