2010年6月4日更新
加速器駆動システム(ADS)
私たちのグループは加速器駆動未臨界炉に用いるFFAG加速器の研究を行っています。 加速器駆動未臨界炉(ADSR:Accelerator Driven Sub-critical Reactor)は大強度陽子加速器と 未臨界炉を組み合わせたシステムです(図1参照)。
加速器で大強度かつ高エネルギーの陽子ビームを生成させ、重金属ターゲットに照射することで、
核破砕反応によって大量の中性子が発生します。この中性子を未臨界炉に導入し、核分裂反応で
中性子を増倍させます。炉心が未臨界状態なので、加速器からのビーム供給を止める事で原子炉も
停止するため、より安全なシステムです。
原子炉の出力Pは、中性子の強度S、未臨界燃料体系の実効増倍率keffを用いて、
P ~ S/(1-keff )
と表されます。実効増倍率keffの調整は制御棒等の調整で行い、Sの調整は加速器のビーム電流
およびエネルギーを調整することで行います。
原子炉の出力を加速器のビームによって制御できることもこのシステムの特徴のひとつです。
さらに、トリウムの様な自然には核分裂しない燃料にも対応することができるため、
核燃料サイクルに対し柔軟なシステムであると言えます。
ADSRではターゲットで、できるだけ多くの中性子を発生させる必要があります。
中性子の発生量は陽子ビームの強度とエネルギーに依存します。
その依存性はビーム強度については比例関係ですが、エネルギーの依存性は図2の様に数GeV領域までは
エネルギーを上げると、急激に中性子発生量があがる事が分かります。
従って、加速器には大電流かつ数GeV程度の高エネルギーの陽子ビームを生成することが要求されています。
このため、ADSRのための陽子加速器として、FFAG加速器が採用されました。
FFAG加速器がどのようにして大電流と高エネルギーの両方を同時に実現するかについては、
こちらをご覧下さい。
京都大学原子炉実験所では既存の原子炉施設KUCA( Kyoto University Critical Assembly )
と新たにADSR研究のために建設したFFAG加速器を結合させ、2009年3月から加速器からの陽子ビームを
用いたADSR実験が開始されました。
この実験ができる施設は今のところ世界中でここだけです。