2010年6月4日更新
固定磁場強収束加速器(FFAG加速器)
FFAG加速器は粒子加速器の1つで「Fixed Field Alternating Gradient」の頭文字を取ったものです。「固定磁場強収束」と日本語訳されますが、一般にはFFAGと呼ばれています。FFAG加速器は従来のサイクロトロンやシンクロトロン加速器のそれぞれの長所を兼ね備えたもので、これまでの加速器では不可能だった大電流で速い繰り返しの加速が可能という優れた特徴を持っています。以下にFFAG加速器の特徴を述べます。
FFAG加速器の特徴
■強収束
シンクロトロン加速器が持つ特徴と同じで、強い収束力でビーム幅を小さくすることができます。
■固定磁場(エネルギーの変化に伴い、ビームの中心軌道が移動する)
サイクロトロン加速器の特徴と同じで、速い繰り返しが可能となります。
■ゼロ色収差
収束力がビームのエネルギーによらず一定で、異なるエネルギーのビーム軌道が相似形となります。
■大きなアクセプタンス(ゼロ色収束差に伴う)
エネルギー幅の大きなビームを損失することなく加速することができます。
FFAG加速器の歴史
FFAG加速器の原理は、1950年代に日本人物理学者大河千弘氏を含む複数のグループによって独立に発案され、程なく電子の加速に成功しました。しかし、陽子を加速することについては、技術的な困難さから長く実現しませんでした。
それから50年近くを経て、同じく日本人らの手によってそれまで困難であった特殊な形状を有する電磁石の製作と高周波加速空洞の技術的困難さが解決され、2000年になりFFAG加速器によって世界で初めて陽子の加速が行われました。以来日本では複数台のFFAG加速器が製作され、加速器の特性・応用研究が盛んに行われています。
現在では、FFAG加速器の優れた特徴に注目して日本以外の国の研究機関でもFFAG加速器の開発研究が行われています。