2018年4月6日更新
大強度ミュオン源の開発(MERIT)
私たちの研究グループでは、大強度の負ミュオンの生成を目的としてFFAG加速器を用いたMERIT方式の原理実証研究を行なっています。
負ミュオンは原子力発電所から発生する放射性廃棄物の低減に役立つと考えられています。
負ミュオンは、電子の質量の約200倍重いこと以外は電子と良く似た性質を持つ素粒子です。
そのため、負ミュオンは原子に捕獲されると電子より原子核に近い軌道を周回します。
原子に捕獲された負ミュオンは原子核と相互作用を起こした後、原子核を別の核種へと変換します(右図)。
大強度の負ミュオンを発生させることができれば、負ミュオンによる核変換を用いて、半減期の長い放射性核種(長寿命核種)を、安定核種もしくは短寿命核種に変換する事ができると考えられています。
高効率に大強度の負ミュオンを発生可能な方式として、FFAG加速器を用いたMERIT方式(多重エネルギー回復内部標的法:Multiplex Energy Recovery Internal Target、以下MERITとする)があります。
MERITとは、下図のようにリング内部でビーム軌道上にくさび型の標的を設置し、ビームを周回(貯蔵)、加速させるのと同時に、ビームを標的に照射することで二次粒子を生成する手法です。
MERITでは、一度標的に照射したビームのうち、標的と反応を起こさなかったものに対しても、エネルギーを回復させ、何度も標的に当て続ける事で、高効率で二次粒子を生成することが可能です。
また、ビームの貯蔵と加速を両立させるため、MERITでは新たな加速方式である蛇行加速を採用しています。
この加速方式を用いことで、連続ビームを取扱うことが可能となり、大強度の二次粒子を生成することが可能です。
本研究グループでは、このMERITの原理実証を目的とした研究を行なっています。
下の写真はMERITの原理実証のために開発している加速器のものです。
本研究は、総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の一環として実施しています。
より詳細な研究内容につきましては、
2017年の加速器学会での発表資料、
FFAG Workshop 2016での発表資料
を御覧ください。