イノベーションリサーチラボラトリ

Innovation Research laboratory

平成15年度末にKUCA棟の隣に竣工した3階建ての建物で、150 MeV FFAGシンクロトロン・11 MeV 負水素イオンビーム線形加速器等を収容する「実験棟」および、30 MeV サイクロトロン・治療施設等を収容する「医療棟」から構成される。

150MeV FFAGシンクロトロン

FFAG(Fixed Field Alternating Gradient : 固定磁場強収束)加速器は、文部科学省「革新的原子炉システム技術開発」提案公募事業として加速器駆動システム(ADS)に関する基礎研究を行うために設置された。

ADS実験は、FFAGシンクロトロンで加速された陽子ビームと、隣接するKUCA建屋内A架台に設置された未臨界核燃料体系を組み合わせて行う。平成21年3月に世界初のADS実験を実施し、その後も、燃料体系やビーム条件を変えて実験を継続中である。

平成27年現在のビーム性能は、エネルギー150MeV、 電流1nA、 繰り返し30Hz、パルス幅100ns以下。ADS実験以外にも、材料照射実験、エアロゾル照射実験、生体ラットへの照射実験等も実施されている。今後はパルス中性子源への展開も視野に入れ、1μAを目指した電流増強を実施中である。

150 MeV FFAG シンクロトロン
図1 150 MeV FFAG シンクロトロン

11MeV 負水素イオンビーム線形加速器

この装置は負水素イオン源・3MeV RFQ・7MeV DTL・11MeV DTLから構成され、150 MeV FFAG シンクロトロンの入射器として用いられている。負水素イオンは1個の陽子と2個の電子からなる複合粒子で、FFAGリング内に設置された炭素薄膜を通過する際、電子が剥離し、陽子となる。この入射方式で約100ターンにわたる長時間入射が可能となる。ビーム性能は、エネルギー11MeV、ピーク電流値1mA、パルス幅100μs、繰り返し200Hzである。入射器としての用途のほかに、11MeVおよび7MeVでの照射実験等も可能である。

11MeV 負水素イオンビーム線形加速器
図2:11 MeV 負水素イオンビーム線形加速器

30MeV サイクロトロン

30MeVサイクロトロン加速器はホウ素中性子捕捉療法で必要となる熱外中性子を発生させるための陽子線加速器である。供給可能な陽子エネルギー、電流は30MeV、1mAである。中性子発生ターゲットと減速体系を組み合わせることにより、1.2×109(n/cm2/s)の強度を有する熱外中性子を生成することが可能である。平成20年12月にイノベーションリサーチラボラトリ医療棟に設置され、平成21年3月より中性子発生試験を開始した。物理実験、動物・細胞の照射試験を経て、平成24年10月に世界で初めて加速器中性子源によるホウ素捕捉療法の治験を開始した。
30MeVサイクロトロンとビーム輸送系
図1 30MeVサイクロトロンとビーム輸送系