趣旨

京都大学原子炉実験所は、京都大学附置の全国大学共同利用研究所として昭和38年(1963年)4月1日に設立され、平成25年(2013年)4月1日をもって創立50周年を迎えます。

昭和30年代は、原子力時代の黎明期で、大学が原子力基礎研究を行うため、全国大学共同利用の研究用原子炉を関西にという気運が高まり、京都大学において昭和31年11月に第1回研究用原子炉設置準備委員会が初代委員長の湯川秀樹教授のもとに開催されました。その後、幾多の議論を経て昭和35年12月に熊取町に建設されることが決まりました。昭和36年12月に起工式が行われ、昭和39年6月に臨界に達し、昭和43年7月には当初の1 MWから5 MWに増強されました。

また、これと並行して昭和39年3月には中性子発生装置、昭和44年3月にはガンマ線照射設備、さらに昭和49年3月には臨界集合体実験装置が完成し、研究炉に加えて共同利用への供用が開始されました。

設立時は六研究部門で出発しましたが、幾度かの増設、改組を経て、現在、3研究大部門(19研究分野、1客員研究分野)、2研究センター(3研究分野、1寄附研究部門)と技術室に整備され、さらに、研究大部門と研究センターは3研究本部体制を構築しています。

この間50年に亘り、理学、工学、農学はもとより、考古学から生命科学・医学まで、研究炉の特長を生かした多方面にわたる研究がすすめられ、数多くの研究成果を挙げ、全国の大学、国公立研究機関からの年間平均6000人日に及ぶ共同利用研究者と共に原子炉を利用した貴重な研究拠点として機能してまいりました。さらに、大学院教育を通じて全国に有為な人材の輩出に貢献してまいりました。

大学における原子力研究教育を発展させるためには、適切な規模の研究施設を大学に配備すること、なかでも実績のある当所の共同利用施設を整備・充実することが必要であると考えます。このため当所においては、研究炉を着実に運転し続けるとともに、純国産の固定磁場強集束型陽子加速器等の開発を推進し、当所の将来構想を基盤とする「熊取アトムサイエンスパーク」構想の実現をめざします。

創立50周年を迎えるにあたり、これまでの歴史を振り返るとともに、今後の更なる研究・教育活動の充実と発展を期待し、記念の事業を計画いたしました。

各位におかれましては、なにとぞこの趣旨をご理解くださり、格別のご高配ご支援をくださいますよう、切にお願い申しあげます。

平成25年6月

京都大学原子炉実験所 所長 森山 裕丈