講演要旨

 

 近年の様々な技術の発展に伴い、がんの三大療法の一つである放射線治療は高精度化が急速に進んでいます。その結果、腫瘍へ線量をピンポイント的に集中させることが可能な放射線治療が実現されつつあります。 放射線治療では、放射線と照射する人体との相互作用による物理反応から、化学反応、生物反応が連鎖し、腫瘍細胞を殺傷します。医学物理学とは基礎物理学を基盤とする、放射線物理学、原子核物理学、原子・分子物理学、放射線計測学、電磁気学、物理数学、情報工学、医学、生物学などの幅広い学問の結集体であり、その知識及び成果を医学へ展開する学術分野が医学物理学分野です。放射線治療の高精度化には、高度照射技術、高度画像技術、高度シミュレーション技術、高度検証技術の4つの革新的技術に関する医学物理学研究開発が必要不可欠です。そして、日々の放射線治療における物理的照射パラメータ情報、腫瘍位置情報や生体的情報等の種々の医療画像を活用することで、患者ごとの最適条件での放射線治療を実施するテーラーメイド放射線治療の実現が、今後の大きなテーマです。

 本講演会では、特に高精度放射線治療の一つである陽子線治療についての最前線の医学物理学研究開発を中心に紹介します。

 

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革新的陽子線治療装置に重要な様々な機能の研究開発概要図。

 

 

 

講演者略歴

 

西尾 禎治(にしお ていじ)
1997年 放射線医学総合研究所医用加速器工学研究部 客員研究官
1998年 国立がんセンター東病院放射線治療部 物理専門官
2008年 国立がんセンター東病院臨床開発センター粒子線生物学室 室長
2012年 国立がん研究センター東病院臨床開発センター 粒子線医学開発分野 ユニット長
2015年 広島大学大学院医歯薬保健学研究院応用生命科学部門 特任教授
2016年より 東京女子医科大学大学院医学研究科医学物理学分野 教授(現職)

 

研究テーマ:

生体内照射領域可視化・腫瘍線量応答性の研究、放射線計測システムの研究開発など放射線治療の高精度化に関する医学物理学研究