中性子材料科学研究分野    研究室のサイト

准教授 森 一広 kmori*
助教 小野寺 陽平 y-onodera*

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人間に役立つ種々の材料の開発研究が行われているが、その特性の発現機構を解明することにより、さらに良い特性を持った材料の発明や改良を行うことが可能となる。本研究室では、中性子の特徴を最大限に利用した中性子回折実験、中性子小角散乱実験および中性子非(準)弾性散乱実験を行い、不規則系(アモルファス・ガラス)物質、結晶物質、非平衡物質およびナノ構造物質で構成されるエネルギー材料(蓄電池材料・水素貯蔵材料など)や機能性材料(ガス分離膜材料・セメント材料など)の原子配列(構造)およびその運動(格子振動・拡散)を明らかにしていく研究を行っている。中性子線を利用するメリットは、軽元素に対して非常に敏感であることが挙げられる。例えば、図1に示すように、リートベルト解析や二体分布関数解析(PDF解析)、そしてリバースモンテカルロ法によるモデリングを行うことで、蓄電池用固体電解質(超イオン伝導体)中のリチウムイオンの位置を精度良く決定することができる。さらに、得られた構造情報を用いてリチウムイオンの伝導経路について予測することも可能である。また、水の存在状態における拡散係数の違いを利用することで、セメントペースト中に含まれる自由水と結合水を中性子準弾性散乱実験により分離観察し、圧縮強度と比較しながらセメント水和物の生成過程を観測することができる(図2)。

図1
図1:(Li2S)70(P2S5)30ガラスとLi7P3S11準安定結晶の構造とイオン伝導経路(超イオン伝導体)。(Li2S)70(P2S5)30ガラスを熱処理することで得られるLi7P3S11準安定結晶は、ガラス状態と比較して1桁以上高いイオン伝導度を示す。イオン伝導経路中のオレンジ領域でリチウムイオンは安定に存在できる。
図2
図2:中性子準弾性散乱によるセメント水和反応のその場観測。セメント水和物の生成によってE = 0 付近のピークが成長し、それに伴ってモルタルの圧縮強度も増大する。