共同利用・共同研究拠点としての認定への支持について

令和 3年 1月 28日

京都大学複合原子力科学研究所
所長 川端 祐司 殿

共同利用・共同研究拠点としての認定への支持について

 貴研究所の前身である原子炉実験所は、日本学術会議の勧告に基づいて、1963 年(昭和 38 年)に京都大学の附置研究所として開所されました。関西研究用原子炉として大阪大学との共同作業で誕生した研究用原子炉(KUR)をはじめ、臨界集合体実験装置(KUCA)、電子線型加速器、コバルト 60 ガンマ線照射装置等の大型の共同利用研究施設を複数有し、共同利用研究を軸に、原子力領域全般に関する基礎研究および安全教育、ならびに、物理学、工学、化学、医学、生物学、農学等の様々な研究領域に渡る基礎研究および応用研究において、多くの成果を上げてきました。2018 年(平成 30 年)の複合原子力科学研究所への改称後も引き続き、共同利用・共同研究拠点として幅広い領域における研究活動の一端を担ってきております。
 貴研究所は、原子力研究を行いたいという研究者の強い希望により設置されたという経緯があります。そのため、貴研究所の運営は当初から全国の大学、国公立研究機関等の研究者の意向を踏まえた共同利用研究を軸として行われていました。これに関連して、貴研究所開所前には、当原子炉利用研究者グループが結成され、活動を始めておりました。1961 年(昭和 36 年)11 月に開催された当研究者グループ準備会において初の幹事が選出され、同年 12 月には第 1 回幹事会が開催され、1962 年(昭和 37 年)4 月には原子炉利用研究者グループサーキュラーNo.1 が発行されました。1963 年(昭和 38 年)4 月の貴研究所の開所、1964 年(昭和 39 年)6 月の KUR 初臨界、同年 8月の定格出力 l MW 達成、1965 年(昭和 40 年)1 月の共同利用研究の受け入れ開始を経て、1966年(昭和 41 年)1 月より貴研究所および当研究者グループとの共同で KUR NEWS を刊行し(現在は連絡メールを配信)、共同利用・共同研究の推進に貢献してきております。また、2003 年(平成 15年)には「KUR 運転継続要望書」を、2009 年(平成 21 年)には「共同利用・共同研究拠点としての認定への支持書」を、貴研究所長に提出しております。
 全国共同利用研究所の重要な役割は、大学の研究科等の規模では実現不可能な施設や装置の設置とその維持であり、それらの内容や計画は研究者コミュニティの要請を踏まえる必要があると考えております。当研究者グループは、団体として、あるいは、グループ会員が個々直接的に、様々な要請を行いつつ、貴研究所の発展に協力してきております。例えば、毎年開催されている将来計画短期研究会に参加して、当研究者グループからの要望を随時伝えてきております。さらに、貴研究所の運営にも直接参画しており、現在も 4 名の運営委員会委員および 8 名の共同利用研究委員会委員を、当研究者グループから推薦しております。
 当研究者グループ会員は、物理学、工学、化学、医学、生物学、農学等の多様な研究分野に渡っています。2020 年度(令和 2 年度)は、新型コロナの影響により共同利用の開始が遅れ、また、キャンセルとなった共同利用も少なからずありましたが、280 件の共同利用研究および 11 件の専門研究会・ワークショップが採択されております。また、2021 年度(令和 3 年度)は、241 件の共同利用研究および 10 件の専門研究会・ワークショップが採択されていると伺っております。2021年度の共同利用研究については、2020 年度に未実施のため 2021 年度に繰り越される分も加わることから、実質的には 2020 年度とほぼ同数の採択件数になると予想されます。なお、10 年ほど前と比較すると、共同利用件数は 2 倍近くになっております。これらの分野の研究・教育は、貴研究所名にもある「複合原子力科学」を支える重要なものであり、近年の共同利用件数およびその推移には、貴研究所が多様な分野の中核的な研究拠点として機能してきており、研究者コミュニティの拡大・多様化に寄与してきたことが現れております。
 上述のように、貴研究所は長年にわたり共同利用・共同研究拠点として重要な役割を担ってきており、複合原子力科学に関連する研究者コミュニティに対する貢献は計り知れないものです。特に、貴研究所の主力装置である KUR における共同利用研究では多大な成果が上げられてきております。残念ながら KUR の共同利用運転は 2025 年度(令和 7 年度)までとのことでありますが、もんじゅサイトに設置する新試験研究炉計画のように新たな希望も見えてきております。また、陽子サイクロトロン加速器等の他の装置で KUR における共同利用研究の一部を担うという計画も伺っております。複合原子力科学に関連する研究・教育のための基盤を維持し、かつ、多様化するニーズに応えるために、貴研究所の共同利用・共同研究拠点としての機能の継続および強化を希望します。特に、近年の研究者コミュニティの拡大を踏まえて、装置・設備の高度化、運用の効率化、宿泊施設や休憩場所等の利用環境の向上、を強く要望いたします。

原子炉利用研究者グループ
代表幹事 渡辺 賢一
(名古屋大学大学院工学研究科)


連絡先

〒590-0494 大阪府泉南郡熊取町朝代西2丁目1010 京都大学複合原子力科学研究所
       原子炉利用研究者グループ事務局
       E-mail : kurriyog @ rri.kyoto-u.ac.jp
       ホームページ : https://www.rri.kyoto-u.ac.jp/riyog/