共同利用・共同研究拠点としての認定への支持について

平成21年1月26日

京都大学原子炉実験所
所長 代谷 誠治 殿

共同利用・共同研究拠点としての認定への支持について

貴原子炉実験所は、日本学術会議の勧告に基づいて、昭和38 年に開所された京都大 学の附置研究所です。関西研究用原子炉として大阪大学との共同作業で誕生した研究 用原子炉(KUR)をはじめ、臨界集合体実験装置、電子線型加速器、コバルト60 ガン マ線照射装置等の大型の共同利用研究施設を持ち、共同利用研究を軸として、学際領 域を含めた原子力の基礎研究分野や原子力教育分野、および中性子を中心とする放射 線科学、ならびに医療照射を含む放射線応用科学分野において多くの成果を挙げてこ られました。
貴実験所においては、当初から全国の大学、国公立研究機関等の研究者の意向を踏 まえた共同利用研究を軸とする運営が行われています。昭和39 年6 月のKUR 初臨界、 同年8 月の定格出力1MW の達成後、昭和40 年1 月より共同利用研究の受け入れが開始 されましたが、それより以前から当原子炉利用研究者グループが結成され活動を始め ていました。元来貴実験所は原子力研究を行いたいという研究者の強い希望により設 置されたという経緯もあり、昭和36 年11 月には準備会において幹事が選出され、同 年12 月には第1 回幹事会の開催、昭和37 年4 月には原子炉利用研究者グループサー キュラーNo.1 の発行が行われました。その後貴実験所と当研究者グループが共同でKUR NEWS を昭和41 年1 月より刊行し、共同利用・共同研究の推進に貢献してきました。
全国共同利用研究所の重要な役割は大学の研究科等の規模では実現不可能な施設や 装置の設置とその維持であり、それらの内容や計画は研究者コミュニティの要請を踏 まえたものでなければなりません。このため、当研究者グループの会員が個々直接的 に、グループとして、あるいは毎年開催される将来計画短期研究会に参加して、さら に貴実験所の運営に直接参画することにより、様々な要請を行いつつ貴実験所の発展 に協力してきました。現在も3名の運営委員会委員と8名の共同利用研究委員会委員を、 研究者グループから推薦しています。
当研究者グループの会員は物理、化学、工学、医療、生物と多様な研究分野に亘っ ています。平成20年度は原子炉の運転が休止中であるため従来よりも減ってはいます が、108件の共同利用研究が採択され、研究会は15件が採択されています。原子炉の運 転が再開される平成21年度は共同利用研究が147件、研究会・ワークショップが16件採 択されました。今後の臨界集合体実験装置共同利用研究や後期の共同利用研究採択分 を含めると共同利用研究は160件近い採択になるものと予想されます。これらの分野の 研究・教育は、総合的な原子力分野の基礎を支える重要なものであり、貴実験所が多 様な分野の中核的な研究拠点として機能していることを如実に物語っています。
昨今地球温暖化防止のための有効な手段として、原子力エネルギーが脚光を浴びて います。次世代原子炉や核融合炉開発を含む原子力の大型プロジェクトの推進も重要 ですが、それとともに、当研究者グループの多くが行っているような、研究者個々の 自由な発想と創造性に立脚する基礎研究も原子力科学の基盤を広げ固めるものとして 育てていく必要があります。そのためには、経済性と効率性を考慮しつつ適切な規模 の共同利用研究設備を整備して充実することが望まれるところです。我国における原 子力関連研究・教育の基盤を維持し、そのさらなる進展のためにも、原子炉利用研究 者グループとして貴実験所の共同利用・共同研究拠点としての機能の継続とより一層 の強化・発展を強く要望いたします。

原子炉利用研究者グループ
代表幹事 森山裕丈
(京都大学工学研究科)


連絡先

〒590-0494 大阪府泉南郡熊取町朝代西2丁目1010 京都大学複合原子力科学研究所
       原子炉利用研究者グループ事務局
       E-mail : kurriyog @ rri.kyoto-u.ac.jp
       ホームページ : https://www.rri.kyoto-u.ac.jp/riyog/