FFAG加速器

 固定磁場強集束型(FFAG : Fixed Field Alternating Gradient)加速器は、通常のシンクロトロンのように軌道半径を一定に保ちながら加速するために、磁場をエネルギーの増加とともに変化させていますが、FFAG加速器は、その名のとおり磁場が時間的に変化しないですむような固定磁場加速方式で、強集束方です。FFAG加速器の原理は強集束原理の発明の翌年(1953年)に大河千弘によって考案されましたが、技術的な困難さから現在まで実現することはありませんでした。しかし2000年に高エネルギー加速器研究機構(KEK)において、FFAG方式による陽子加速器の原理を実証するための、500keVまで加速するモデルであるPoP(Proof of Principle)‐FFAGによって世界で初めてFFAG方式による陽子加速に成功しました。



PoP‐FFAG加速器(KEK)



PoP-FFAG

 KUCAに導入されるFFAG加速器は20MeVから150MeVまで加速できるエネルギー可変型であり、KUCA棟に隣接した建設中のイノベーションラボ内に設置され、2005年度から運転が開始される予定です。

FFAG加速器の基本仕様
ビーム種 陽子
エネルギー 20〜150MeV
ビーム電流 1μA
パルス繰り返し 120Hz

 また加速器複合系は、イオンを発生させ加速するイオン源(イオンβを含む)、入射用加速器(ブースター)、主加速用加速器(メイン)、低エネルギー輸送系、利用側へ輸送する高エネルギービーム輸送系から構成されています。主加速用加速器から取り出された150MeVの陽子ビームはKUCAへ送られます。このFFAGによって加速された陽子ビームをタングステンなどの核種に照射することで発生する2次粒子(中性子)を用いて、未臨界炉心の核特性を調べる実験を行います。

FFAG複合システム イメージ

 加速器駆動未臨界炉の出力Pは、中性子源強度Sに比例し、(1-keff)に反比例してP∝S/(1-keff)のように表されます。よって加速器のビーム電流、つまり加速される粒子の数を調節することで中性子源強度Sを制御し、出力を制御することができます。さらに、加速器のビーム電流だけではなく、加速された粒子のエネルギーにも依存します。そこでエネルギー可変型の加速器を導入することで、ビーム電流と加速粒子のエネルギーを変化させてSを調整し、加速器駆動未臨界炉の出力制御を行うことが考えられています。またどのようなエネルギーの中性子を用いることが効果的であるかは研究課題の一つであり、エネルギー可変型を導入する理由の一つでもあります。

FFAG加速器技術開発年次計画

平成14年度
・FFAG加速器の入射装置購入
・エネルギー可変型FFAG加速器設計
・電磁石(一部)製作

平成15年度
・ビーム取り出し部の設計
・電磁石、真空系の製作
・電源購入

平成16年度
・制御系、高周波加速部、ビーム取り出し部の製作
・エネルギー可変型FFAG完成
・ビームトランスポート系の設計、一部製作

平成17年度
・ビームトランスポート系完成
・FFAG加速器とKUCAとの結合−設計・製作

平成18年度
・加速効率等の測定
・エネルギー可変型FFAG加速器の改良 
目標:〜7μA 2.5〜150MeVエネルギー可変

イノベーションラボ建設中(平成15年10月28日)

イノベーションラボ建設中(平成16年3月5日)
ビームライン 裏から

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