核反応を用いた地雷探知における計測システムの開発

 第一次世界大戦中に開発された地雷は、今日に至るまで様々な戦争や局地的紛争に使用されてきました。戦争や紛争が終了した後も、殆どの地雷はそのままの状態で放置され、長年を経た今もなおその機能を維持しています。この地雷のために紛争後の復興が進まず、地域経済の発展を阻害しており、その社会的影響は甚大なものとなっています。このような地域社会を恐怖に陥れている埋設地雷を探知・除去することは、人道上緊急の課題として位置付けられています。
 我が国は、地雷に苦しむ被埋設国への単なる財政的支援に留まらず、先端的な科学技術を駆使しての技術的支援を緊急に実施し、国際貢献に寄与することが強く期待されています。この地雷探知システムの開発は、平成14年度に文部科学省より科学技術振興機構(JST)に示された、戦略的創造研究推進事業における社会技術分野の目標に沿って、同機構により設定された研究領域のひとつです。これは、人道的観点からの対人地雷の探知・除去活動を支援するための研究開発を推進し、地雷被埋設国の地雷処理機関(政府機関、国際機関、NGO等)に提供することを目指すものです。この研究開発の一環として、京都大学エネルギー理工学研究所の吉川潔教授を中心とする、超小型放電型中性子源による地雷探知技術の開発計画が発足しました。この研究の目的は、地雷の火薬成分の物性値自体に着目し、地雷探知過程又は地雷除去確認過程のサーベイにおいて、地雷を確実・簡易且つ迅速に探知可能なセンシング技術を開発することです。その研究開発の担当分野のひとつとして、当研究室では「地雷探知における計測システムの開発」を担当することとなりました。
 近年の対人地雷は、プラスチックや木製容器で覆われ、その探知は困難を極めます。そこで物質の透過力が強い中性子を利用することにより、地雷の火薬成分そのものを土壌と識別する方法が考えられます。


地雷探知計測システムの概念図

 中性子源から発生した中性子を地中に照射し、地雷の火薬成分との反応を測定することによって、以下のように地雷を探知できると期待されています。

 全体システムとしては平成17年度中の完成を目指し、実証試験を行っていく予定です。



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