Purpose

中性子小角散乱解析法の新展開を目指して

 

我が国の中性子小角散乱における実験環境(あるいは利用環境など)は、これまでにない充実期を今迎えようとしている。J-PRACでは加速器中性子源を用いた高強度・高分解能・広角度測定を可能とするTAIKANの建設が始まり、一方、JRR-3においても最新の中性子光学の成果を取り入れることで、ビーム強度の増強・測定範囲の拡張や新たな実験装置の開発が進んでいる。
 このような「実験装置」の進歩に対して、「測定手法」特に「解析法」の現状は、どうであろうか?「実験装置」の進歩に対応する「解析手法」は開発されているだろうか?「分散系における個々の粒子のサイズ(慣性半径)を見積もるGuinier近似による解析法」や「粒子分布の揺らぎの相関長を求めるOrnstein-Zernike式による解析法」は広く利用されている一般的な手法である。しかし、これらの解析で得られる1次情報以上の詳細な構造データを求める場合、個々の研究者のこれまでの経験により培われた手法によることが多いのが現状であると考えている。一方、欧米では、高分子系では様々な試料に応じたモデル関数が提示されており、更に、タンパク質の溶液散乱では、EMBLSvergunのグループによりCRYSONDAMINなどの散乱関数simulation法やab initio解析法の国際標準化を目指した開発が進められている。このような手法は確かに素晴らしいが、今後の中性子小角散乱法の発展を考えるとき、様々な試料・測定条件に直ちに適用できるかというと課題は多い。例えば、TAIKANの高分解能・広角度測定データの解析や中性子小角散乱法の最大の特徴の1つである重水素化によるコントラスト変調への対応、更にはX線小角散乱法との相補的な解析などが挙げられる。
 したがって、国内の中性子小角散乱を用いる研究者が統一的視点に立ち、解析法を検討する必要があると考えられる。そこで、中性子小角散乱利用者がそれぞれの解析手法の相互理解を進め、今後の解析法の展開方向を検討し、最終的には様々な測定条件に対応できる共通の解析手法を得ること(開発すること)を目的とした当研究会を発足させた。当研究会の目指す主なテーマは、

1.        SANS(SAXS)の最新の研究・解析法の紹介

2.        SANS(SAXS)の最新・今後の実験装置や光学系の紹介

3.        上記を踏まえた今後の解析法や実験装置の開発や高度化の検討

である。

 

              世話人 

             物材機構  大沼正人
             
京大原子炉 杉山正明 (事務担当)
             原子力機構 鈴木淳市
                   高田慎一
             北大院工  古坂道弘