可搬型モニタリングポスト

従来より検討されてきた緊急時のモニタリング活動においては、可搬型のモニタリングポストを機動的に展開することが想定されています。しかしながら従来の可搬型モニタリングポストの場合、精度の良いNaI(Tl)検出器を搭載すると重量が数十kgにも及ぶのが一般的です。これは真空管である光電子増倍管の保護のための構造や、光電子増倍管の動作に必要な高圧電源とそれを稼働させるに十分な電池などが必要なためです。半導体検出器で小型軽量化を目指したものもありますが、厳重な温度管理や低い線量率での精度に問題がありました。

そのような現状を受け、KURAMA-IIをベースに小型軽量な可搬型モニタリングポストを開発しました。内部はKURAMA-IIそのもので、検出器も小型軽量でUSBバスパワー駆動可能なCsI(Tl)検出器である浜松ホトニクスC12137をつかっていることから、内部には厳重な温度管理や衝撃から光電子増倍管を守るような構造が不要となり大幅な小型軽量化を実現しました。通信モジュール等をIoT用LTEモジュールにかえたことで消費電力も大幅に低減しており、市販されているアウトドア用のポータブルリチウム電池で約1週間の稼働を実現しています。耐環境性能も十分確保されており、数ヶ月にわたる屋外設置でも正常に稼働しています。このように運用能力を向上させながらも測定能力は十分であり、環境γ線連続モニタのJIS規格であるJIS Z4325を満たしています。

この研究は原子力規制庁 放射線安全研究戦略的推進事業費(JPJ007057)の助成を受けたものです。開発は松浦電弘社と共同で実施しています。