京都大学研究用原子炉KURの今後の取扱いについて- 新たな複合原子力科学の展開を目指して -

2022年4月5日 更新

京都大学複合原子力科学研究所は全国共同利用研究所として、多くの研究者・学生に原子力研究施設を用いた実験研究の場を提供するとともに、人材の育成に貢献してきました。このうち研究用原子炉KURは、1964年の運転開始以来、がん治療法であるホウ素中性子捕捉療法(BNCT)の世界初の社会実装を実現するなど、多くの優れた成果を生み出してきましたが、施設の高経年化に加え福島第一原子力発電所の事故以降の安全規制の強化、使用済燃料の処分の問題などにより、大学において維持管理することが難しい状況となりつつあります。その一方、これまでBNCTの治験に用いられてきたサイクロトロン加速器が当研究所に移管され、将来の中性子源としての整備が進められています。また、福井県の「もんじゅ」サイトに設置する新たな試験研究炉の概念設計が昨年度より開始となり、当研究所は日本原子力研究開発機構及び福井大学とともに中核機関として設計に参加しています。さらに、もう1基の研究用原子炉である京都大学臨界実験装置KUCAでは、安定運転と高度利用を目指して、核燃料の低濃縮化作業が進められる等、新たな複合原子力科学研究の展開に向けた活動が行われています。

このような状況を踏まえ、京都大学では、4年後のKUR使用済燃料の米国への引き渡しにかかる期限である2026年5月までに KURの運転を終了することとしました。

今後は各種の加速器、KUCA及びホットラボラトリ等の実験施設の整備を進めるとともに、外部研究機関との連携を深め、熊取キャンパスにおいて核燃料・放射性同位元素及び量子ビームを利用した新たな複合原子力科学研究及び関連する人材育成を進めていきます。

2022年4月5日

京都大学複合原子力科学研究所 所長 中島健

error: Content is protected !!