中性子材料科学研究分野    研究室のサイト

教授 奥地 拓生 okuchi*
准教授    
助教 梅田 悠平 umeda.yuhei.2ekyoto-u.ac.jp

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黒鉛とダイヤモンドは物質としての性質(物性)が大きく異なる。この違いは炭素の原子スケール配列の差による。本研究室では、結晶、非晶質物質、非平衡物質の物性の起源を原子のスケールで理解すること、その理解を踏まえて有用な材料を得ることを目標として、各物質の合成と解析を行っている。中性子線、X線(自由電子レーザーを含む)、電子線などの量子ビームを使って、回折法・散乱法・吸収法による解析を行い、太陽系、惑星、地球の物質や、人間に役立つエネルギー材料、機能性材料を調べている。量子ビーム解析により、物質中の原子の配列(静的構造)に加えて、原子の揺らぎと拡散(動的構造)を捉えることができる。物質の静的・動的構造と、その特徴的な物性との関連性を予測した上で、高温や高圧などの最適な条件の下で試料の合成を行い、それを解析することで、物性の起源を明らかにしている。

中性子による解析は、水素やリチウムなどの軽元素に対して特に敏感である。本研究室ではこの中性子の特徴を利用して、軽元素を含む物質の解析を重点的に行っている。図1に静的構造の解析の例として、超高圧力の条件で合成した、微少量の水素を含む結晶についての結果を示す。図2に動的構造の解析の例として、水素を含む結晶が高温条件で脱水素反応を引き起こす前に、水素が結晶内部を移動する過程を原子スケールで捉えた結果を示す。

図1
図1 17万気圧で合成した含水素鉱物・ワズレアイトの構造解析。左側の中性子散乱長分布の赤色(負値)が水素。散乱長から得た水素濃度は1500ppmであり、地球内部でこの結晶が海水の3倍の水素を吸収できることを示した。
図2
図2 水酸化マグネシウムの準弾性散乱解析。左側の中性子エネルギースペクトルの裾部分の幅が、結晶内部の水素跳躍運動の頻度を示す。右側は温度と水素の跳躍頻度の相関図。頻度が異なる二種類の跳躍の経路を発見した。