放射線管理学研究分野    研究室のサイト

教授藤川 陽子fujikawa.yoko.5r*kyoto-u.ac.jp
准教授八島 浩yashima.hiroshi.7r*kyoto-u.ac.jp

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原子力施設や放射線利用施設の従事者や周辺住民の方が、放射線や放射性物質による健康影響を受けることなく、安心して仕事や生活ができるために必要な「放射線・放射性物質」の「安全管理」に関する研究を行っている。具体的には、下記の4つの課題を中心に、工学、物理学、環境科学、医学などの多様なバックグラウンドをもつ専門家が協力して研究を進めている。東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて、委員会や学会等を通して復旧復興に向けた取り組みに協力するとともに、緊急時、廃炉時、廃止措置にむけた放射線管理に関する研究も同時に進めている。

1)原子力施設やその周辺環境における放射線安全管理:
原子力施設やその周辺環境の放射線管理に関して必要な研究を行っている。対象としてはKUR、KUCA、所内の加速器である。放射線の健康リスクの大きさに依存した、より高精度で信頼性が高い安全管理手法の開発を目指している。
2)福島第一原発事故や原子力施設に起因する放射性物質の環境中での動態:
東京電力福島第一原子力発電所により周辺環境に放出された放射性物質、また、原子力施設から環境中に放出された放射性物質の動態について研究をおこなっている。特に、事故で放出された放射性物質の物理・化学性状の研究や土壌や植物を介した人への移行について、放射性セシウムなどを対象に研究を行っている。また、土壌から植物への移行をモデルで表す研究を進めている。
3)放射性物質を利用した環境研究:
福島第一原発事故で環境汚染を引き起こした放射性セシウムは生態系の中で循環し、一部の生物種では生物濃縮が生ずる。そこで、これをトレーサーとして、森林生態系から大気へ放出されるバイオエアロゾル(真菌類胞子やバクテリアなど;図1)について、その種類、発生量、発生メカニズム、さらにはその影響についても研究を行っている。
4)放射線や環境有害物質の健康への影響と危険度(リスク):
放射線を過剰に受けると様々な健康への影響が生じる。これまでに、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)に用いる中性子線の生体影響の特徴を明らかにしてきた。DNA損傷や突然変異誘発を指標とし、中性子線単独の効果やホウ素存在下で中性子線照射により生じるα線やリチウム線の生物効果に関する研究を進めている(中性子照射により生じた細胞のDNA二重鎖切断箇所が染色され蛍光を発している;図2)。
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図1 福島第一原発事故で放出された放射性セシウムは森林の中で真菌類を介して循環することがわかってきました。大気へも胞子にふくまれて放出されます。自然の環境の理解も動態解明にかかせません

図2 研究用原子炉(KUR)からでる中性子線で照射された細胞。DNAの二重鎖が切断された個所が光って染色されている。