摂動角相関測定装置

トレーサー棟に設置されている摂動角相関測定装置。 手前の台上にある4つの黒い円筒形のものがフッ化バリウム検出器。 後方にはエネルギー分別回路などの測定用電子回路やデータ処理ようコンピュータがある。

原子核の電磁気モーメントや物質中の局所磁場や電場勾配を測定するために、我々のグループは摂動角相関測定装置を持っています。この装置は原子核がある中間状態の前後に出す2つのγ線のエネルギーと時間差を測定し、中間準位にある間の原子核の歳差運動を測定するものです。

γ線の時間差は通常は非常に短い(核にもよるが1×10-8秒程度)ので、検出器には時間分解能の非常に高いフッ化バリウム検出器が用いられます。このフッ化バリウム検出器を2〜4個置き、エネルギー分別回路によりどの検出器がどんなエネルギーのγ線を捉えたかをリアルタイムで判定しています。そしてmatrix coincidence回路で測定したい準位の前後のγ線が来たかどうかを判定し、目的のγ線が来た場合にはこの時間差を計ります。この時間差は指数関数になるのですが、γ線は原子核のスピンの向きに対して偏って放出されるので振動しながら指数関数的に減少するスペクトルが得られます。この振動周期が原子核の歳差運動をあらわしています。

局所磁場や電場勾配測定の物性研究では、試料の温度も重要になります。この摂動角相関測定装置と組み合わせて使える冷凍機(〜数Kまで冷却可)やヒーター(数百℃まで加熱可)も用意されており、様々な温度での試料の電子構造に関する情報が調べられるようになっています。

摂動角相関(PAC)測定装置の説明は、共同利用実験装置のページにも掲載されています。

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