所長ごあいさつ

所長

京都大学原子炉実験所は、昭和38年、「原子炉による実験及びこれに関連する研究」を行うことを目的に、全国大学の共同利用研究所として京都大学に附置され、以来、研究用原子炉(KUR)等の施設を共同利用研究等に供しつつ、一貫して核エネルギーと放射線の利用に関する研究教育活動を進めて参りました。振り返れば山あり谷ありで、決して平坦ではありませんでしたが、これまでの実績に依拠した当所の研究教育活動については、エネルギーと環境に関する昨今の情勢、また放射線利用のさまざまな可能性の観点からも、これまでにも増して大きな役割があると考えています。

実際、例えばエネルギーと環境については、問題が21世紀に入ってますます顕在化しています。世界的には、アジア・アフリカ諸国の発展に伴うエネルギー需要の急速な増大や、地球環境を保全する観点から二酸化炭素の排出制限が検討されるなど、解決すべき課題が目白押しです。太陽電池などの新しいエネルギー源の開発・利用が進められておりますが、それらで賄える容量には自ずから限界があることから、核エネルギーの利用は継続されるでしょう。エネルギー資源の乏しいわが国においては、従来から、その安定供給を図ることが重要な課題とされ、核エネルギーの利用が進められてきましたが、今、改めて安全確保のあり方が問われる状況にあり、今後の利用についてはさまざまな対策が必要と考えられます。一方の放射線利用についても、従前より、原子力利用の発展と相まってその研究開発が進められ、既に多くの利用技術が定着しておりますが、将来に向けては、医療や材料などの分野でさらに多様で有効な利用技術の創出が期待されているところです。

このような状況のなか、中長期の視点からは人材育成が重要であり、特に適切な規模の研究施設を用いた研究教育活動が必要と考えられます。このため当所においてはKURの運転を可能な限り継続して行うこととしています。原子力工学系の学生・研究者はもちろん、全国大学の広い分野の学生・研究者にも利用されることを考えれば、その意義と役割は大きく、当所の責任の大きさを痛感しています。また、当所における研究の分野は原子力基礎科学から粒子線物質科学や放射線生命医科学まで広範にわたっていますが、総じて言えば、京都大学の学風の下で基礎的・基盤的な研究を展開し、着実に成果を重ねてきており、特に当所の特長を活かした重点的研究の成果については、最近の外部評価においても高く評価されているところです。これらの成果をもとに、KURの運転を軸として中性子利用のさらなる展開を図り、エネルギー関係の動向にも対応して、核燃料サイクルや次世代炉を視野に入れた広い意味での安全な原子力システムについて大学らしい研究を進めようとしています。

大学における原子力研究教育を真に発展させるためには、適切な規模の研究施設を大学に配備すること、なかでも実績のある当所の共同利用施設を整備・充実することが必要と考えられます。このため当所においては、KURやKUCAを着実に運転し続けるとともに、当所の将来構想を基盤とする「熊取アトムサイエンスパーク」構想の実現に向けて尽力する所存です。大学における研究教育活動の推進を担う全国共同利用研究所、共同利用・共同研究拠点としての役割を果たすととともに、産学公民連携等の活動も積極的に推進して参りますので、今後とも皆様方のご理解とご支援を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。

京都大学原子炉実験所長 川端 祐司