所長ごあいさつ

京都大学複合原子力科学研究所(以下、複合研)の歴史は古く、前身の原子炉実験所(1963年設立、2018年複合研へ名称変更)時代を含めると2025年で設立62年となります。複合研には、2基の原子炉施設(研究用原子炉KUR、臨界集合体実験装置KUCA)、多彩な加速器施設、大規模なホットラボラトリ等が設置されています。大学の附置研究所として、これほど多彩な施設を有するところは他にありません。複合研は、世界でも類を見ない稀有な教育・研究機関として、国内外の関連コミュニティから認知・期待されています。複合研は、京都大学における教育・研究はもとより、文部科学省から認定された共同利用・共同研究拠点として、我が国全体の原子力や放射線分野の教育・研究に貢献しています。

複合研は、いま、大きな岐路に立っています。研究所の設立以来研究所のシンボルとして活躍し続けてきたKURが、2026年5月をもって運転を停止します。複合研の教育・研究において、KURへの依存度は正直大きい。そのため、KURの運転停止後は、研究面でも安全管理の面でも、研究所のありかたが大きく変わります。それを見据えて2023年度と2024年度の二年間、KURの運転停止後の目指すべき方向性として、おもに以下に示す事項について集中的に議論してきました。2025年度と2026年度は、これらについてなにかしらの結論を示していくことになります。

  1. 研究面での将来計画
  2. 安全管理体制のありかた
  3. 共同利用・共同研究のありかた
  4. 福井県「もんじゅ」サイトに設置予定の新試験研究炉の設計・開発
  5. 安全かつ効率的なKURの廃止措置
  6. 1から5を実行するのに適した組織(所外との連携含む)

決めなければならないことがたくさんあって大変な状況ではありますが、良いニュースもあります。老朽化していた研究棟が完全リノベーションされ、第一研究棟として生まれ変わりました。また、その隣には、地上三階地下一階の第二研究棟が新規で建設されました。これらにより、安全管理体制が集約化されるとともに、教育・研究環境が劇的によくなりました。人間でいえば還暦を超えた複合研ですが、気持ちも新たに、明るく楽しく若々しく、人が集う魅力的な研究所を目指して、成長・発展していきます。これからも皆様のご理解・ご支援を賜りますようよろしくお願いいたします。

2025年4月1日

京都大学複合原子力科学研究所 所長・教授 黒﨑 健