チェルノブイリによる放射能災害 国際共同研究報告書
編集:今中哲二(京都大学原子炉実験所) 体裁:B5版/370ページ
発行:技術と人間
発売:1998年10月
定価:3400円
目次
はじめに
第1章 事故影響研究の概要
1.安全研究グループとチェルノブイリ事故共同研究
第2章 放射能汚染データとその解析7.長期的な放射線被曝とガン影響の総合評価 <Zipped WORD Document>
第3章 周辺住民の急性放射線障害9.ベラルーシに沈着したヨウ素131とセシウム137の比
10.土壌溶出液中でのウラン同位体の分離現象
11.事故直後の放射線障害と10年後の状況
第4章 疫学研究と健康統計データ15.ベラルーシでのチェルノブイリ被災者疫学研究の現状
第5章 個別の健康影響研究16.ロシアでのチェルノブイリ被災者疫学研究の現状
17.ロシア・リャザン州でのリクビダートル健康調査報告
18.ウクライナ・ルギヌイ地区住民の健康状態
19.ロシア・ツーラ州の放射能汚染と住民の健康統計
20.ベラルーシの子供の甲状腺ガン
第6章 放射線生物学研究21.ベラルーシの青年・大人の甲状腺ガン
22.ベラルーシ汚染地域での子供たちの水晶体混濁
24.ベラルーシの子供たちの末梢血リンパ球変異(1)
第7章 被災者救済の制度と活動25.ベラルーシの子供たちの末梢血リンパ球変異(2)
26.汚染地域の野生ネズミの細胞変異
27.染色体異常観察データによる被曝量の推定
28.染色体異常データに基づく被曝量の推定方法
30.ウクライナにおける被災者の12年
付章 データと資料31.ソ連政府の対応とベラルーシでの12年
33.チェルノブイリ問題への法的取り組み
A.放射能汚染と健康影響に関するその他のデータ
B.チェルノブイリ原発と事故に関する資料
技術と人間 〒162-8790 東京都新宿区神楽坂3-6-12FAX 03-3260-9320 TEL 03-3260-9321はじめに1986年4月26日に旧ソ連ウクライナ共和国のチェルノブイリ原発4号炉で原子力発電開発史上最悪の事故が発生してから12年以上が経過した.日本の人々の多くにとっては,チェルノブイリ事故はすでに遠い国でのひと昔前のできごとであろう.しかし,私たちの社会のありようを考えるとき,また将来のその方向を考えるとき,チェルノブイリ事故の問題は,日本の私たちが直面している問題そのものにつながっていることが明らかになるはずである.
チェルノブイリ事故が起きた1986年当時,日本の原発は33基(合計出力2500万kW)であった.それから12年を経た現在,53基(4500万kW)にまで増加している.原発を推進している人々は,地球温暖化を防ぐと称して2010年にはその出力を7000万kWまで増やすことが必要だと唱えている.世界のどこの原発であろうとそれが抱えている基本的な危険性は同じであることを考えると,私たちの社会がエネルギー源として原子力に依存しているかぎり,チェルノブイリのような事故が再び起きることを覚悟しておかねばならない.
本書は,チェルノブイリ原発事故影響に関する研究の現状について,トヨタ財団からの研究助成をうけ1995年11月から1997年10月にかけて実施したささやかな国際共同研究のまとめである.ベラルーシ,ウクライナ,ロシア被災3カ国での事故影響研究について共同研究メンバーがまとめた論文や,興味深い研究を行なっている研究者に依頼した論文など33編を収録した.放射能の同位体比,染色体異常といった専門的なテーマから事故被災者をとりまく社会的問題まで幅広い内容にわたっている.チェルノブイリ事故の問題全体からすればほんの一端にアプローチしたにすぎない共同研究ではあるが,被災現地で問題に直接携わっている研究者の論文をはじめ,チェルノブイリ事故影響に関する貴重な情報をまとめたユニークな報告書が出来上がったと考えている.
共同研究のメンバーは以下の9名であった.
今中哲二(代表) :京都大学原子炉実験所
本書の内容が,原子力問題に関心をもつ多くの人々にとって役立つものであることを願っている.小出裕章 :京都大学原子炉実験所
V・マツコ :ベラルーシ科学アカデミー・放射線生物学研究所,ベラルーシ
I・リャプツェフ :ロシア科学アカデミー・エコロジー進化問題研究所,ロシア
O・ナスビット :ウクライナ科学アカデミー・水圏生物学研究所,ウクライナ
A・ヤロシンスカヤ:ヤロシンスカヤ・チャリティ基金,ロシア
M・マリコ :ベラルーシ科学アカデミー・物理化学放射線問題研究所,ベラルーシ
V・ティーヒー :環境教育情報センター,ウクライナ
杉浦聡 :日本チェルノブイリ連帯基金,ミンスク事務所,本部・松本市
1998年9月
今中哲二