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チェルノブイリによる放射能災害

国際共同研究報告書 

編集:今中哲二(京都大学原子炉実験所)

体裁:B5版/370ページ

発行:技術と人間

発売:1998年10月

定価:3400円

 
          目次
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はじめに

 1986年4月26日に旧ソ連ウクライナ共和国のチェルノブイリ原発4号炉で原子力発電開発史上最悪の事故が発生してから12年以上が経過した.日本の人々の多くにとっては,チェルノブイリ事故はすでに遠い国でのひと昔前のできごとであろう.しかし,私たちの社会のありようを考えるとき,また将来のその方向を考えるとき,チェルノブイリ事故の問題は,日本の私たちが直面している問題そのものにつながっていることが明らかになるはずである.

 チェルノブイリ事故が起きた1986年当時,日本の原発は33基(合計出力2500万kW)であった.それから12年を経た現在,53基(4500万kW)にまで増加している.原発を推進している人々は,地球温暖化を防ぐと称して2010年にはその出力を7000万kWまで増やすことが必要だと唱えている.世界のどこの原発であろうとそれが抱えている基本的な危険性は同じであることを考えると,私たちの社会がエネルギー源として原子力に依存しているかぎり,チェルノブイリのような事故が再び起きることを覚悟しておかねばならない.

 本書は,チェルノブイリ原発事故影響に関する研究の現状について,トヨタ財団からの研究助成をうけ1995年11月から1997年10月にかけて実施したささやかな国際共同研究のまとめである.ベラルーシ,ウクライナ,ロシア被災3カ国での事故影響研究について共同研究メンバーがまとめた論文や,興味深い研究を行なっている研究者に依頼した論文など33編を収録した.放射能の同位体比,染色体異常といった専門的なテーマから事故被災者をとりまく社会的問題まで幅広い内容にわたっている.チェルノブイリ事故の問題全体からすればほんの一端にアプローチしたにすぎない共同研究ではあるが,被災現地で問題に直接携わっている研究者の論文をはじめ,チェルノブイリ事故影響に関する貴重な情報をまとめたユニークな報告書が出来上がったと考えている.

 共同研究のメンバーは以下の9名であった.

 本書の内容が,原子力問題に関心をもつ多くの人々にとって役立つものであることを願っている.

                            1998年9月

                             今中哲二